前回の断熱編では、どれだけ断熱材を施工しても高気密とセットでないとその断熱効果を発揮できないというお話をさせていただきました。
まだ前回のコラムをご覧になっていない方はぜひご覧ください。

前回のコラム高気密の必要性 断熱編

高気密は断熱だけでなく換気とも密接な関係があります。
今回は高気密について『換気』という観点から解説したいと思います。

高気密の家は息苦しい?

「高気密」という言葉はわかるようで正確にはわからない、なんとなくのイメージで語られがちな、そんなフレーズでもあります。
高気密住宅と聞いてイメージされる定番はこちら。

「高気密住宅は息苦しい」

そう言われてみれば、そんな気もする…というイメージだけで語られています。
詳細はこれから解説していきますが先に結論から言うと、これは間違っています。
間違っているどころか正反対です。
では、なぜこんなイメージが広がっているのか?
それは、家づくりのプロである工務店もそういう情報発信をしているからです。

「気密性能は高すぎない方が適度に空気が入って快適です」
「高気密の家は息苦しいよ、ラップで包んでいるようなものだから」
「中気密が一番コストパフォーマンスがいい」
「窓を開けた開放的な暮らしを提案しています」

などなど、プロでもこういった発信をしているケースがあるのです。
家づくりの正解は1つではありませんので様々な考え方があります。
しかし、物理法則については揺るがぬ原則が存在します。
主張が理に適っていればいいのですが、そうではない場合はただのイメージで語っているにすぎません。
今回は原理原則に基づいてお話を進めたいと思います。

息苦しい家の正体

まず、息苦しい家とはどんな家でしょうか?
水の中や宇宙のように空気が無い場所は息苦しいですが、そんな家はありませんよね。
住宅の息苦しさはエベレストの頂上の息苦しさと種類は似ています。
標高が高い所が息苦しいのは空気が無いわけではなく、酸素濃度が低いためです。

住宅の場合、人が生活して呼吸していれば酸素が減り二酸化炭素が増えていきます。
つまり、二酸化炭素の濃度が上昇していくと人は息苦しく感じるようになります。
室外の空気における二酸化炭素濃度はおよそ400ppm程度になります。
(この数値が上昇し続けているのも問題なのですが、その話はまた別の機会に。)
室内の場合は広さや人数などによって二酸化炭素濃度はまちまちではありますが、室内は人が呼吸する分だけこの数値は高めになります。
室外よりは高くなりますが、室内の二酸化炭素濃度は1000ppm以下に抑えることが必要です。

なぜかというと、室内の 二酸化炭素の濃度が上昇していくと人体に影響がでてくると言われているからです。
1500ppm程度になると眠気を引き起こしたり、学習パフォーマンスや意思決定力の低下といった認知能力に影響があるという研究結果があります。
しかも、眠気を引き起こすものの睡眠の質は低下していくそうで、人体にとって望ましくない環境です。
居眠りをしてしまったり宿題がはかどらないといった場合、もしかしたら二酸化炭素濃度のせいかもしれません。
多くの人が家を建てる理由に「子育て」を挙げていますので、子どもためにも無視できない事実です。

つくばで子育て世代の家を手掛けるベースポイントのマスク画像

ちなみに、車は家以上に狭い空間で人が密集するため二酸化炭素濃度がかなり高くなりやすい場所です。
運転中に眠くなる時は空気の入れ替えを意識してみてください。

計画換気

家の中の二酸化炭素濃度の上昇を防ぐ方法があります。
それは適切に換気をしていくことです。

家の中の空気を入れ替えるための最も簡単な方法は窓を開けることです。
窓を開けて風を通せば、新鮮な空気を取り込むことができます。
しかし、この方法には問題があります。
1つは、真夏でも真冬でも家中の窓を開けておかなければならないという点です。
せっかく冷暖房で部屋を快適にしていても窓を開け放っていては台無しです。
雨天時の問題や防犯という面でも運用が難しそうです。
もう1つは自然の風だよりという点です。
風の有無で換気量も大きく変わってしまいますので、常に快適な空気を維持するのは難しそうです。

なんとなくの対策では、必要十分な換気ができません。
ここで大切になるのが「計画換気」という考え方です。
家の体積(気積)から必要な給気量・排気量を算出し、換気設備によって計画的に換気をすることです。
簡単に言ってしまえば「換気扇で換気する」ということなんですが、実はこれを実現することは簡単ではないのです。

現在、シックハウス症候群の防止などを目的に家の空気を換気するよう義務付けられています。
これを24時間換気と呼んでいて、家中の空気が1時間で半分、2時間で全て入れ替わるように換気設備を設置する必要があります。
これは建築基準法で定められた義務ですので新築の家でしたらどの家にも換気設備があるはずです。
しかし、その換気設備が計算通りに機能しているかというと必ずしもそうとは言えないのが現状です。
計画換気が機能しない原因は気密性能不足にあります。

気密性能と計画換気

計画換気が計算通りに機能するかどうかは、家の気密性能と大きく関係しています。
計画換気の最も重要なポイントは「空気の出入り口を明確にして必要な換気をすること」にあるからです。
高気密の家と高気密ではない家(ここでは低気密の家と呼びます)で、空気の動きにどんな違いがあるかを見ていきます。
ここではわかりやすいように換気扇と給気口で換気する最も一般的な換気タイプ(第3種換気)で説明します。
※ベースポイントでは第1種換気という熱交換型のタイプを採用しています。

高気密の家

高気密高断熱の必要性がわかる高気密の家の図

高気密の家の場合、計画換気はシンプルに機能します。
通常、排気をすると同じだけの給気が必要になります。
換気設備で排気をすると室内の気圧が低くなるので、自然と給気口から新鮮な空気が入ってきます。
上の図のように給気と排気の位置を適切に離せば、家中を空気が流れることで効果的に換気できます。
計画換気により二酸化炭素濃度の上昇を抑え、健康的な空気を保ちます。

低気密の家

高気密高断熱の必要性がわかる低気密の家の図

低気密の家の場合、換気は計画通りには機能しません。
気密性能が低い=空気の出入りする隙間がある、ということです。
換気設備による排気量は高気密の家と変わりありませんが、給気が上手く機能しません。
換気扇で強制排気することで室内の空気圧が下がりますが、それを補うように換気扇近くの隙間から空気を取り込んでしまうのです。
そうすると計画した給気口からは空気が入りませんので、家全体の空気が動きづらい状態になり本来狙っていた居室の換気が進みません。
換気自体はしているものの、換気扇付近のごく狭い範囲の空気が入れ替わっているにすぎないのです。
肝心の居室は空気のよどんだ状態が続いてしまいます。
このように漏気が原因で換気が十分に機能しないことを「換気のショートサーキット」と呼びます。
低気密の家の場合、給気口からはほとんど給気できていないという例もあるそうです。

計画換気は高気密とセット

このように、換気を計画通りに機能させるためには高い気密性能が前提となります。
つまり「高気密の家は息苦しい」どころか、高気密の家は計画通りに換気された健康的な空気の家であると言えます。
一方の低気密の家では空気の出入りは多いかもしれませんが、居室の空気の質はどうでしょうか?
一般的にリビングなどで給気してトイレや洗面所などで排気するケースが多いです。
低気密で計画換気が機能しない場合、特にリビングなど人の集まるところは空気がよどみ二酸化炭素濃度の高い状態になっているかもしれません。
換気も気密も目に見えないだけに理解しにくい部分ですが、健康や子どもの成長に直結する重要な問題です。
イメージだけで判断せず理に適った構成で家をつくることが大切です。

まとめ

住宅における高気密の必要性について換気という観点から解説させていただきました。
イメージ先行で「高気密の家は息苦しい」などの主張もよく見かけますが、それは理に適っているでしょうか?
今回のコラムを読んでいただいた皆さまには簡単ですね。

一般的に、低気密の家よりは高気密の家の方が価格も高くなると思います。
高気密の家をつくるためには気密処理部材、丁寧な施工、気密測定などが必要なのですからそれは当然です。
家族で健康的に暮らせる家をつくるために、本当に必要な性能は確保するようにしてください。
本当に子どもたちのためになる心地よい家を一緒につくっていきましょう。

<プロフィール>

つくばで注文住宅を手掛けるベースポイントの代表者
坪野 隼太

ベースポイント株式会社 代表取締役

営業、設計、現場管理など家づくり全般とWEB、SNS等を担当しています。

家づくりのことなら何でもご相談ください。