日本で家を建てるのであればきちんと考えておかなければならない事。
それは「地震」です。
日本は世界的に見ても地震が頻発しているエリアですし、茨城県やその周辺でも地震は日常的に発生しています。
最近では震度3や4程度の揺れには慣れてきてしまったという方も多いのではないでしょうか。
でも震度6や7を超える揺れとなれば話は別です。
揺れが大きくなれば人は立っていられず歩くこともできません。
家具や家電が倒れたり家が大きく損傷する可能性も考えられます。
以前から南海トラフ地震の可能性についてはニュースで取り上げられますが、その他の地域も例外ではありません。
直近では能登半島地震もありましたし、今後どの地域でいつ震災が発生してもおかしくない状況です。
これから家を建てるのであればしっかりとした耐震性能を確保しておくことが必須です。
「今の新築なら耐震性能もいいのでは?」と思われるかもしれませんが、残念ながらそうとも言えないのが現状です。
新築と言えど十分な耐震性能を備えていないと思われる家も多く建てられています。
耐震性能が不十分な家がこれ以上増えることが無いよう、これから家づくりをされる方には耐震性能について知っていただきたいと思います。
耐震性能は構造に深くかかわりプロ同様に理解することは難しいので、最低限の見分けができるよう基本的な内容からご紹介していきます。
日本の家は地震に強い?
地震と日本の家についてよく耳にするのが「日本の家は地震に強い」というフレーズ。
日本は昔から地震大国なので、地震の少ない諸外国と比べると耐震性能が高いという主張です。
これはある意味正しく、ある意味間違っています。
日本は確かに昔から地震大国ですので、建物を地震から守るための知恵やノウハウが蓄積されています。
事実、何百年も前に建てられた寺院や古民家が今なおたくさん残っていますし、震災でも倒壊してしまう軒数はそこまで多くありません。
その一方でニュースで流れる海外の震災の映像を見ると、街中の建物が崩れ一面が瓦礫の山になっていることがあります。
過去に地震がなかった地域では建物に求められる耐震性能規定が低く、大きい地震が来ると耐えられないというケースです。
こういった側面から考えると、地震の少ない地域の建物に比べると日本の建物は地震に強いとも言えます。
諸外国よりも地震に強い家だとしても、日本で安心して安全に暮らせるかというと話は別です。
日本の家も震災のたびに大きな被害にあっています。
熊本地震や能登半島地震の被災地の様子は記憶に新しいところです。
海外と比べて高い耐震性能があったとしても、日本の繰り返す地震に耐えられなければ地震に強い家とは言えません。
耐震基準が意味するもの
震災で被害にあっているのは古い家なのでは?という意見もあるかと思います。
確かに法定の耐震基準が今よりも低い時代に建てられた家の方が被害が多いのですが、現行基準で建てられた家にも被害はあります。
不思議に思われるかもしれませんが、現行基準の家にも被害があるのは当然のことなのです。
これを理解するために、まずは耐震基準の意味から解説していきます。
建築基準法で最低限の耐震性能が規定されており、それが「耐震基準」です。
耐震基準は今までに何度か引き上げられているのですが、阪神淡路大震災を経て2000年に大きな改定があり、それを新耐震基準や2000年基準と呼んでいます。
この2000年に改定されたのが現行の耐震基準です。
震災を経ての新基準というととても強そうに思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。
「耐震基準」の意味を考える必要があります。
耐震基準が要求しているのは、大地震が起きても家が倒壊しないことです。
家が倒壊したら中にいる人は潰れてしまいますが、倒壊さえしなければ避難することができます。
これが耐震基準です。
つまり、住まい手の「命を守る」ために避難する猶予を確保する耐震性能が耐震基準なのです。
暮らしを守る耐震性能
もちろん命を守ることは何よりも大切です。
ただ、それは最低限のラインでもあります。
震災で無事に避難できたとしても、家が大きく損傷していれば元通りの暮らしをするのは困難です。
取り壊しになるかもしれませんし、そうでなくても大規模補修が必要になるかもしれません。
震災は命だけでなく、財産を含めた暮らしに大きな影響を与えます。
命を守るだけでは地震に強い家とは言えません。
家自体の損傷を最小限にして「暮らしを守る」ことができてこそ「地震に強い家」だと思います。
耐震性能に関しては、海外よりも強い、昔より強い、というだけでは意味がありません。
家族の命と暮らしを守れるだけの性能があるかどうか、という基準で判断することが大切です。
耐震等級
暮らしまで守れる地震に強い家を建てようと思ってもなかなか見分けが難しいと思います。
インターネットで探してみても、様々な会社が様々な工法で建てていて、それぞれが高耐震をアピールしているからです。
震災から命を守る家を地震に強い家と呼んでいるのか、震災から暮らしまで守る家を地震に強い家と呼んでいるのか、高耐震といっても曖昧です。
そんな時に判断の指標になるのが耐震等級という制度です。
建築基準法の耐震基準はあくまでも最低限のラインで、そのラインをクリアしなければ建築できないという規定です。
耐震基準をクリアしているのは前提として、耐震性能に応じて格付けをするのが耐震等級です。
耐震等級は1、2、3の3段階となっています。
耐震等級ごとの耐震性能の目安についてご紹介します。
耐震等級1
耐震等級1というのが建築基準法で定められている最低基準の耐震性能です。
ごくまれ(数百年に一度)に発生する地震でも倒壊しない程度の耐震性能とされます。
耐震等級1に満たない耐震性能の場合、建築することができません。
特に耐震等級2、3との表記がない場合、耐震等級1の建物だと考えられます。
耐震等級2
耐震等級2というのは、耐震等級1の強度と比較して1.25倍の強度が基準となります。
学校や病院などといった地域の避難場所に指定されるような建物は耐震等級2以上が必要とされます。
耐震等級2に適合していることを証明すると、地震保険の保険料が30%割引されるというメリットもあります。
耐震等級3
最高等級である耐震等級3は、耐震等級1の強度と比較して1.5倍の強度を有しています。
どれくらいの耐震強度かというと、消防署や警察署などの防災拠点となる建物に求められる耐震基準となります。
耐震等級3に適合すると、地震保険の割引率も50%に上昇します。
耐震等級ごとの実績
耐震等級3の家が耐震基準(耐震等級1)と比べて1.5倍強いという点はご理解いただけたと思います。
ただ、その差が実際に地震が起きた時にどれほどの意味があるのかはイメージしにくいのではないでしょうか。
そこで、2016年の熊本地震で被害のあった益城町の全数調査の結果をご紹介します。
1981年以前の耐震基準で建てられた家は、倒壊・全壊といった重大な損傷が45%以上もあり、無被害の家はわずか5%程度。
2000年に改定された現行基準に適合した家でも、倒壊・全壊で6%、その他損傷が32%、無被害だったのは61%だけでした。
耐震等級3の家も被災していたのですが、大規模な損傷は一切なく小さな損傷が12%で、87%もの家が無被害という結果です。
耐震等級と実際の地震被害が関係していることが一目瞭然です。
こうした実績がある以上、これから建てる建物は耐震等級3を目指すべきだと思います。
ベースポイントでは、すべての家を耐震等級3に適合するように設計します。
耐震性能はオプションで選ぶものではなく、すべての家にあってしかるべきだと考えているからです。
いつ降りかかるか分からない震災に対し、命だけでなく暮らしまで守ることを目指しています。
耐震等級についての注意事項
インターネットで検索してみると「耐震等級3相当」という言葉も頻繁に出てきます。
耐震等級3の取得手続きはしていないものの耐震等級3と同じ程度の耐震性能という意味合いかと思います。
耐震等級3を取得する場合は申請内容の審査を受けるのですが、「相当」を掲げている場合はその審査を受けていないので実際の性能はわかりません。
「耐震等級3相当」というフレーズには注意が必要です。
もし実際に耐震等級3と同等の性能を有しているのであれば、補助金等のメリットもありますので等級3の正式取得をお勧めします。
また、詳細はまた次回ご説明したいと思いますが耐震等級3の中にも種類があります。
1つは構造計算(許容応力度計算)をして耐震性能を算出した耐震等級3で、もう1つは壁の配置や量などから簡易的な計算で算出した耐震等級3です。
どちらも認められていて耐震等級3には違いないのですが、その精度には差があるのが実情です。
より精度が高い構造計算で算出した耐震等級3がお勧めです。
まとめ
新築といってもその耐震性能には大きな差があることがご理解いただけたかと思います。
そして、耐震性能の差が家族の暮らしを守れるかどうかの重要な指標になります。
耐震性能は耐震等級によって可視化されていますので、これから建てる家は耐震等級3を基準とすることをお勧めします。
<プロフィール>
ベースポイント株式会社 代表取締役
営業、設計、現場管理など家づくり全般とWEB、SNS等を担当しています。
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