先日、自立研関東ゼミへ参加してきました。
この会は自立循環型住宅、つまり省エネルギーで維持できる高性能住宅について学ぶための集まりです。
工務店だけに限らず建材屋さんや職人さんなど多岐にわたる業種の方が参加しています。

こういった学びのための場というのはいくつもありますが、この会が珍しいのが実践と実測を大切にしているところ。
いくら知識だけ学んでもそれが家づくりに反映できるかは別問題ですから、聞いて満足していてはいけません。
知識をしっかりと実践し、その結果を実測することが重要です。

今回は今年1回目の講習でしたのでまずは知識を学ぶ講習でした。
今回のテーマは「空調の基礎を極める講座(基礎編)」。
タイトル的には基礎っぽいのですが、「極める」とついているだけあって深い内容でした。

空調の基礎を学ぶ際に避けて通れないのが「湿り空気線図」です。

つくばで全館空調を建てるのに欠かせない湿り空気線図

湿り空気線図を初めて見る方は線がいっぱいで意味がわからないと思います。
このたくさんの線が何を意味しているかというと、空気の温度、相対湿度、絶対湿度、比エンタルピーなどの関係を表しています。
空気の中身を温熱という観点から可視化するために必要なツールです。

私は以前のセミナーで空気線図の読み解き方は学んではいましたが、なかなかこの数値を感覚としてはつかめていない状態でした。
今回の講習では数値を体感として理解するための例として、東京の気候とフランスのボルドーの気候をこの湿り空気線図に落とし込んで比較してみました。
そうしたら日本の気候の特徴が見えてきました。

全館空調計画の参考になる空気線図(東京とボルドーの比較)

まずこの図の基本的な見方を簡単にご紹介します。

[下の目盛り]
空気の温度で、右に行くほど温度が高くなります。

[右の目盛り]
絶対湿度。
絶対湿度とは、空気1㎥あたりに含まれる水蒸気の量を表しています。

[右上がりの曲線]
相対湿度。
普段よく目にする湿度〇〇%という表記はこの相対湿度と呼ばれるものです。
実は空気が含むことのできる水蒸気の量は温度により異なるんです。
その温度の空気が含める水蒸気量を100%として、水蒸気量の割合を示しています。

[右上がりの直線]
比エンタルピー。
温度や水蒸気を合わせた空気のエネルギーのことです。

[快適ゾーン]
一般的に快適に過ごせる空気の目安となる数値は以下の通りです。
絶対湿度:5g/kgDA~12g/kgDA
比エンタルピー:30kJ/kgDA~60kJ/kgDA
この範囲を黄色くしています。

そこに東京フランス・ボルドーの1月~12月までのそれぞれの平均温度・平均湿度を点で入力しています。
この点の分布範囲を見ればそれぞれの気候がいかに違うかが一目瞭然です。

ボルドーは快適ゾーン付近にある点が多いです。
冬は温度が快適ゾーンの目安よりもやや低くなりますが、絶対湿度は快適ゾーンにあります。
少々の暖房で快適に暮らすことができそうです。

一方の東京は、真夏も真冬も快適ゾーンから外れた真っ白のエリアに点があります。
気温が低く乾燥状態にある冬と高温多湿の夏。
快適ゾーンにあるのは春と秋だけで、1年の半分が厳しい気候です。
特に夏の方が大きく外れていて不快な気候であることが読み取れます。
夏はボルドーへ移住したくなりますね…。

さらに、エアコンを稼働させると湿り空気線図上でどのような変化が起きるのかも計算演習しました。
そして会場にあったエアコンの稼働状況についても計算して実測検証しました。
まずは給気口と吹き出し口の温度・湿度・風量を計測。

エアコンの空調効果を実測している様子

どれだけ除湿されているのかを計算すると、1時間あたり3.6リットルも除湿されているという結果に。
3.6リットルは3600ml、1時間は3600秒ですので、毎秒1mlずつ除湿されている計算になります。
本当にそれだけ除湿されているのか今度は室外機の様子を確認に行きました。

エアコン空調による除湿効果を確認する様子

エアコンのドレンを辿っていくと、確かにポタポタと水が出てきていて概ね計算通りの除湿効果があることが確認できました。
一般的な除湿器よりもエアコンの除湿効果の方がかなり大きくなります。
高温多湿の日本では、エアコンを除湿という観点からも効果的に利用することが快適な家づくりのポイントになってきます。

他にもいろんな話があるのですが、それはまたの機会に。
湿り空気線図でわかる通り、快適に過ごすためには空気温度と絶対湿度がポイントになります。
温度は感覚的にわかると思うのですが、水蒸気は目に見えないのが難しい部分です。
今年の夏も本当に暑くなりそうですが、つくばの気候を実測しながらより良い空調を検討したいと思います。
年間を通じて快適に過ごせる家をつくるために実践と実測を重ねていきます。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます!
茨城県で注文住宅を建てるベースポイントの代表者
坪野 隼太

設計から現場監督まで家づくり全般を担当してます。

趣味はファミリーキャンプとパン作り。

最近はプロバスケ「茨城ロボッツ」のにわかファン。