先日、栃木県の那須塩原市へ行ってきました。
那須塩原やその周辺エリアは個人的に好きなのと比較的行きやすため、今まで何度も行ったことがあります。
キャンプへ行ったり、スキーへ行ったり、牧場へ行ったり、素敵なお店を巡ったり。
いろんな目的で楽しめますし自然が豊かで過ごしやすい気候なので、家族みんなのお気に入りです。

ただ、那須エリアへ行こうとするとなぜか娘が風邪をひいて熱を出すことが多く、計画通りにいかないこともしばしば。
楽しみ過ぎて発熱してしまうのかもしれませんが、いつもドンピシャのタイミングで発熱するんです。
お気に入りの場所なのですが、ちょっとした鬼門でもあります。
娘も体力がついてきたので、今後はもう発熱しないと信じたい…。
一緒に遊んでくれるのもあと何年あるのかわかりませんが、また懲りずに家族で那須へ出かけたいと思います。

遊びの話から始めてしまいましたが、今回那須塩原へ行ったのは家族で遊びに行った訳ではありません。
今回の目的は製材工場の視察です。

地域材の活用と品質

ベースポイントでは高品質な地域材の採用を進めているのですが、その地域というのが八溝山地です。
八溝山地は茨城県・栃木県・福島県の3県にまたがる山地です。
現在ベースポイントは茨城県の丸川木材さんの製材する八溝桧を家の土台、柱、床材やその他の材料で採用しています。
ただ、梁(はり)については桧ではなくベイマツを使用しています。
梁など横向きに使う木材は縦に使う柱よりも大きな寸法の材料が必要となることと、ベイマツが非常に曲げの力に強いことが理由です。
しかし、大きいサイズのベイマツは国内では手に入らないので基本的には輸入することになります。
ベイマツの特性は梁に適していますし品質も全く問題ないのですが、地域材の採用を推進する上で以前から課題と考えている部分でした。

そこで、今回は八溝山地の杉でつくる梁材の視察に行ってきました。
八溝山地は桧だけでなく高品質な杉の産地でもあるのです。
梁材をつくるためには太い木が必要になりますが、杉であればサイズも問題ありません。
ただ、粘り強さなどの特徴を持つベイマツやアカマツなど松類の方が梁材としては一般的なのも事実。
地域材を使用することには重要な意義がありますが、材木としての品質が伴わなければ意味がありません。
実際の数値や特徴を知るために八溝杉の梁材を製材する二宮木材さんの工場を視察してきました。

八溝杉の特徴

素性の良さ

まず八溝杉の特徴をお伺いすると一つ目に挙げられたのが「素性の良さ」でした。
素性がいいとだけ言われてもわからないと思いますので、まず木材について説明します。

木は伐採してもそのままの状態では建築に使用できません。
木は大量の水分を含んでいるのですが、伐採・製材して乾燥していくと変形してしまうからです。
木が水分を含んだ状態で家を建てて、その後に木が変形してしまったら大変ですよね。
木材はしっかり乾燥させてから使用するのが鉄則です。

木がどれくらい水を含んでいるかを計測すると「含水率」として数値化することができます。
季節にもよりますが、杉の木が山に生えているときの含水率はおよそ200%あります。
皆さんが想像するよりも大量の水分が含まれているんです。

家を建てる木材として使用する場合は含水率20%以下まで乾燥させる必要があります。
木を乾燥させていくと途中で変化が現れます。
含水率が30~25%程度まで乾燥してくると木材が割れたり、ねじれたり、反ったりしてきます。
割れてしまえば柱や梁などの大きな材料にすることはできなくなってしまいます。
こうした変化は木の種類や木の生えていた環境によって異なります。

木材の説明が長くなりましたが話を木の「素性の良さ」に戻します。
八溝杉は乾燥させたときに割れ・ねじれ・反りといった変化が少ないそうです。
これが八溝杉の「素性の良さ」です。
素性が良く変化しにくいため高品質な材木をつくることができ、無駄も最小限にすることができるのです。

高い強度

八溝杉のもう1つの特徴は強度の高さです。
天然の無垢材は工業製品ではありませんので一本一本強度もバラバラです。
だから一本ずつ強度を測定していくことが大切です。
(今回は詳しく触れませんが、一般的に流通している木材は強度の測定をしていません。)
強度を測定すると八溝杉の特徴が見えてきます。

梁として使うために大切なポイントになるのが木材の変形しにくさを意味する「ヤング係数」です。
ヤング係数は数字が大きいほど変形しにくいことを意味します。
一般的な杉材はヤング係数50程度のものが多いのですが、八溝杉は70以上のものが多くあります。
近隣の産地でも50程度のものが多いようなので、北関東の特徴というよりも八溝山地の特徴と言えそうです。
八溝杉は梁材にも適した特徴を持っていることがわかりました。

製造過程も大切

地域の山を守るためには良い循環をつくることが大切です。
ただ山を放置するだけでは年老いた木々ばかりの山になり活動が低下していきます。
山を良い状態に保つためには適切に伐採と植林をしながら管理していく必要があります。
だからこそ地域材を積極的に使うことに意味があるのです。
そして、ただ地域材ならいいのではなくその製造過程も大切なポイントです。

エコな燃料でつくる

先ほどもご紹介したように木材は乾燥させることが大切です。
木材をしっかりと乾燥させるために乾燥機を使用します。

たくさん並んでいる銀色の箱が乾燥機です。
製材した木材をこの中に入れて高温で1週間程かけて乾燥させていきます。
これだけの乾燥機を稼働させ高温にするためには大量のエネルギーが必要になります。
もしこれを灯油で賄おうとすると1日で3000リットルも消費するそうです。
しかし、これだけの灯油を燃やし続けたら環境負荷も大きくなってしまいます。

こちらの工場では基本的に灯油は使用していません。
石油を使わずにバイオ燃料を使用しています。
バイオ燃料は何かというと、製材の時に発生する木のクズです。
製材の過程で発生するクズを燃料に木を乾燥させるので無駄がなくカーボンニュートラルを実現しています。
木くずについては燃料にする以外にも紙の材料になったり畜舎に敷かれたりと有効活用されています。

丁寧な仕事が品質をつくる

乾燥の際の工夫は燃料だけではありません。
先ほどもご紹介したように天然木は一本ずつ状態が異なります。
杉の場合、白っぽい色のものよりも黒っぽい色のものが水分含有量が多く、乾燥しにくいという特徴があります。
これをただ一緒に乾燥させるだけでは、出来上がった製品の品質もバラバラ。
そこで、品質を一定にするために一本ずつ色を見ながら仕分けして、白色のものと黒色のもので乾燥機の設定を変えています。
大量の木材がありますし、乾燥前の水分を含んだ木材は非常に重いので非常に労力のいる工程です。
でもこの丁寧な仕事のおかげで高品質な木材が安定供給されているのです。

視察を終えて

八溝杉の特徴や品質、製造工程も見させていただき、非常に優れた材料であると感じました。
家をつくる上で木材の選定は非常に重要なポイントですので、今後も学びながら慎重に検討していきたいと思います。
検討する上でも今回の視察は大変意味のあるものになりました。
包み隠さずご協力いただいた二宮木材さん、コーディネートいただいた丸川木材さん、本当にありがとうございました。
今後もより良い家づくりのために学び続けていきたいと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます!
茨城県で注文住宅を建てるベースポイントの代表者
坪野 隼太

設計から現場監督まで家づくり全般を担当してます。

趣味はファミリーキャンプとパン作り。

最近はプロバスケ「茨城ロボッツ」のにわかファン。