先日、工場見学ツアーへ行ってきました。
茨城県には工場がたくさんありますし、工場見学ができる場所も多いです。
何ヵ所か工場見学へ行ったことがありますが、私は近所にあるビール工場の工場見学が特にお気に入りです。
その理由は言うまでもありませんね笑
CURATIONER工場見学
今回は近所の工場ではなく、長野県千曲市にある工場へお邪魔してきました。
山崎屋木工製作所の新工場視察が目的です。
ベースポイントではこちらの新工場で製作している木製サッシCURATIONER(キュレイショナー)を採用しています。
完成品を見ることはあっても、製作現場を見るのは初めてでしたのでとても勉強になりました。
CURATIONERは長野県産のカラマツや木曽桧から作られています。
その材料が実際に加工されていく工程を見学させていただきました。
まず最初に驚いたのがその加工精度。
この機械(全自動切削加工機)でほぼ全ての加工が完了するそうです。
しかも15分程度であっという間に加工していました。
そして、この機械で加工したものがこちら。
木を何枚も重ねているわけではなく、一本の木からこれを削り出しているんです。
この凹凸が別のパーツとピッタリ合うことで隙間の無い窓フレームになります。
窓サッシは防水や気密の要ですので、これだけの精度が必要なのも頷けます。
こうして加工した木材をさらにヤスリで表面を整えたら組み立ての工程へ。
のり付けや組み立てについては人の手作業の部分もあります。
そして形が完成したら塗装工程に移ります。
塗装は新しく導入したという機械で行います。
人の手よりもムラなく厚みを持たせて塗装できるそうです。
実際、以前の塗装仕上がりと比較しても、木目が美しく出ています。
塗料も新しい物を採用して、木目の美しさだけでなく対候性も向上したそうです。
以前のタイプでも素晴らしい品質だと思っていましたが、さらなる進化を遂げています。
乾燥したら再び人の手による仕上げ工程です。
本当に細部までこだわり丁寧につくられていることがわかります。
千曲川のすぐそばに建つ工場はロケーションが良く、窓からの景色も素敵です。
そして作業をしている皆さんがとてもオシャレ。
木製品の加工場というと木くずがいっぱいありそうですが、とてもキレイでカッコイイ場所でした。
工場見学だけでなく山崎屋木工製作所の山崎社長の想いについてもお伺いしてきました。
元々は木製サッシではなく、家具などを製作する木工所だったそうです。
そこから木製サッシの製作を手掛けるようになったきっかけは2011年の震災。
エネルギー資源の少ない日本のために自分にできることを模索した結果たどり着いたのが高性能木製サッシでした。
地元の木材を無駄なく活用して、住宅における消費エネルギーを削減する高断熱の木製トリプルサッシをつくることで、地球環境を守ります。
実現のために高性能木製サッシの本場であるヨーロッパへ行き、考え方や技術を学んできたそうです。
CURATIONERの性能や品質は、山崎社長の熱い想いがあってこそだと感じました。
ただオシャレだから木製サッシをつくるのではなく、その先の未来を見据えているからこそ性能にもこだわっています。
たくさん売れるものよりも自分の信じたものだけをつくり続ける姿勢に感銘を受けました。
私自身もそうありたいと思いますし、そうした想いの込められた製品を使うことに喜びと責任を感じます。
木製サッシの製造を学んだ次は、実際にCURATIONERを使用した物件の見学へ。
今回は2棟の高性能パッシブハウスを見学させていただきました。
佐久平パッシブハウス
1軒目は、軽井沢や八ヶ岳で別荘建築をメインに手掛けている新津組さんの建物。
別荘建築がメインというだけあって圧巻の空間づくりでした。
木造建築扱いですが一部に鉄骨を使うなど強度を確保することで大空間と大開口を実現していました。
南面に並ぶ木製サッシからの日射取得が効いていて暖かく過ごすことができました。
こちらの建物はきっちりと区画整理のされた住宅街に位置するのですが、大開口があっても周囲の視線を上手に遮るよう設計されていました。
造園工事は春の予定とのことでしたが、お庭ができたらもっと素敵な空間になりそうです。
現在は住まいとして暮らされているようでしたが、設計としては別荘建築をベースにしているそうです。
一般的な住宅とは異なる設計のおかげで、過ごし方も住宅とはちょっと違うように感じました。
住宅は、誰が決めたかわからない「普通」の過ごし方にとらわれがちです。
普通の暮らしよりも、住まい手さんらしく暮らすことが大切であることをあらためて意識できました。
追分の家
2軒目にお邪魔したのはパッシブハウスジャパン代表理事の森みわさん設計の「追分の家」。
しかも、設計の森みわさん自ら案内をしていただきました。
パッシブハウスというのは、環境先進国ドイツで生まれた家の省エネ基準です。
パッシブハウス認定された家は、住宅性能とエネルギー効率を緻密に計算してつくられた「とても燃費のいい家」だと言えます。
今までにもいくつかパッシブハウス認定取得の建物を見学させていただく機会がありました。
温熱計算の緻密さやその性能ゆえの快適さには体感するたびに関心しっぱなしです。
その一方で、数値にとらわれ過ぎているのではないか?という疑問も持っていました。
実際、ハイレベルな話ではありますが一定のレベルを超えると体感できるような差はなくなります。
体感できないレベルまで数値を求めるパッシブハウスの認定基準が高すぎるように考えていました。
だからこそパッシブハウスジャパン代表理事である森みわさんが何を語るのかにも関心がありました。
結論から言うと、想像とスケールの違うとても素晴らしいお話を伺うことができました。
まず、家の佇まいが素敵すぎますね。
パッシブハウスの基本は太陽と上手に付き合うことなので、南面からの日射取得がしやすいと有利になります。
しかし、こちらの土地は真南から45度振れているので日射取得に工夫が必要です。
そんな土地に合わせて太陽に素直な設計をした結果、上の写真の左手前の角から日射を取得する設計になっています。
デザインのためのデザインではなく、機能的な設計に基づいた美しさに魅力を感じました。
そして、パッシブハウスについてもお伺いすることができました。
パッシブハウスのような高性能住宅は住まい手さんにとっては快適な住環境ですし、消費エネルギーの削減にもつながります。
これも重要なことなのですが、森さんはもっと先を見据えていました。
パッシブハウスの目的は環境保護や人権保護にあるそうです。
ところが日本ではなかなか浸透しづらいテーマであるため、健康や快適な住環境という切り口で展開しているとのこと。
快適性能という観点だけで見ると、住まい手さんが体感できないレベルを超えたら完成になってしまいます。
しかし、森さんはその先の地球や社会を見据えているので、エネルギー消費を極限まで削減していくことを目指していました。
そしてそれは家づくりに限ったことではないというお話がありました。
住宅というテーマにおいては私たちは「生産者」ですが、その他の分野においては「消費者」でもあります。
家づくりにおいて高尚なことを掲げていたとして、日々の生活でそれにふさわしい消費者なのだろうか?
誰もが食品、衣服、電化製品、車など様々なものを消費しながら生活しています。
環境や人権は生産者だけでなく消費者としても重要な観点であり、常に意識することが大切です。
森さんの実際の暮らしについてもお伺いできてとても貴重な機会でした。
消費者としての姿勢が大切なのは当たり前のことなのかもしれませんが、住宅の生産者としてトップランナーである森さんが口にされると重みが違います。
体感性能だけを見てパッシブハウスは行き過ぎかな?と考えていた自分の視野の狭さに気づかされました。
最終的に何のために何を大切にしていくのかを意識することが大切ですね。
振り返り
山崎社長、新津社長、森さんという錚々たる方々から学ぶことができました。
今回は木製サッシを軸にしたツアーだったのですが、木製サッシのその先まで感じることができました。
やはり皆さん見据えている未来のスケールが大きかったです。
未来につなぐために今できることを今から取り組む。
当たり前のように思えますが、行動するのは簡単ではないですよね。
感心して終わりにせず、自分の行動につなげていきたいと思います。
今回ご協力いただいた方々、企画・運営をしていただいた皆さん、どうもありがとうございました。
微力ながら私も未来につなげる仕事をしていきたいと思います。
設計から現場監督まで家づくり全般を担当してます。
趣味はファミリーキャンプとパン作り。
最近はプロバスケ「茨城ロボッツ」のにわかファン。