木の家や注文住宅を検討している方なら、「ウッドショック」のニュースを見たことがあるのではないでしょうか。
現在、ウッドショックと呼ばれる程に木材価格が高騰していますので、家づくりにも大きな影響が出ています。
今回は、ウッドショックと家づくりについて解説していきたいと思います。
ウッドショックとは
まずはじめにウッドショックの概要についてご紹介します。
ウッドショックとは、世界的な木材不足からくる木材価格の高騰のことです。1970年代のオイルショックになぞらえてウッドショックと呼ばれています。
ウッドショックは日本国内だけの問題ではなく、世界中に影響を及ぼしています。
ウッドショックの要因
世界的な木材価格の高騰は、新型コロナウイルスの感染拡大を発端に複合的な要因があります。
アメリカの住宅需要の高まり
2020年に始まったコロナ禍をきっかけにリモートワークが増加したことや、米国政府の金融緩和政策により住宅ローン金利が大幅に下がったことなどから、米国内の住宅需要の高まりを招きました。
コロナ以前から害虫や山火事の被害のため木材が不足気味だったことに加え、ロックダウン等のコロナ対策の影響で製材工場の稼働が不十分になったことも重なり、需要と供給のバランスが悪化しました。
中国の木材消費の増加
中国でも経済成長にともない木材需要が高まっています。中国国内でも木材は製造されているものの、生産量には限りがあるため輸入木材の割合が拡大しています。
経済成長を背景に豊富な資金のある中国は、世界の丸太輸入量の実に40%以上を占めています。
コンテナ不足
コロナ禍の巣ごもり需要によって世界的にインターネット通販の物流量が増加したことにより、輸送用のコンテナが不足する事態となりました。
コンテナ不足からコンテナ運賃も急騰し、木材価格の更なる高騰や供給量の悪化につながりました。
2021年のウッドショックは以上のような要因があげられますが、2022年になり状況はさらに悪化してしまいました。
ロシア・ウクライナ情勢
ロシア・ウクライナ情勢は木材にも深刻な影響を及ぼしています。
ロシアは元々、木材の輸出国でした。
ロシアのような寒い地域では木の成長が遅いため、目が詰まった質の高い木材が生産できるためです。
寒冷地ならではの品質と広大な国土から木材の輸出大国となっていましたが、欧米諸国の経済制裁によりロシアの木材はほとんど市場に流通しなくなりました。
そして、日本も欧米諸国と同様にロシアに対する経済制裁を行っており、当然木材の輸入も停止しています。
世界的なコロナ禍は落ち着きを見せていますが、ウッドショックはまだ先が見通せない状況です。
ウッドショックの影響
ウッドショックは実際の家づくりにどれくらい影響しているのでしょうか?
一口に木材と言っても多種多様なため一概には言えませんが、概ね3割~5割は値上がりし、物によっては従来の倍以上の価格にまで高騰しています。
木材価格の高騰だけでなく、木材不足も深刻で供給が不安定な状況が続いています。
ウッドショックの結果として住宅自体の価格も上昇傾向にあり、更に木材の供給不足から建設工事の遅延などの影響も生じています。
日本の木材は?
世界的なウッドショックで輸入木材の価格が高騰している現状を知れば、
「それなら日本国内の木材を使えばいいのでは?」
と考えるのではないでしょうか。
もちろんそういう動きはありますが、それだけでは解決は難しい状況です。
日本は6割以上が輸入木材
日本は昔から木造建築が多いのですが、そこで使われる木材の6割以上が輸入木材に頼っています。
日本にもたくさん木があるのに、意外と輸入材が多いと思いませんか?
これには日本林業ならではの理由があります。
日本人の多くは「森」のある風景を想像すると、「山」の景色が浮かんでくると思います。
これが日本の林業の難しい点です。
山で木を伐採し、運び出すためには、まず山に林業のための道や設備を整備することが必要になります。
立地の問題もあり日本の林業はコスト高になる傾向があるのです。
一方で海外の木材輸出国の場合、山ではなく平地に森が広がっていますので、日本の山間部での林業と比較して効率の良い林業が可能になります。
こうした林業の特性の差から、コストパフォーマンスと安定供給に優れる輸入材を併用するのが日本のスタイルとなっています。
急に国産木材を増産するのは難しい
輸入材の高騰と供給不足により国産材の需要は高まっていますが、すぐに国産材を増産するのは現実的ではありません。
工場で機械をどんどん動かせば増産できるという訳ではないからです。
まず大規模な設備投資をしないと木材の伐採量を増加させることはできませんが、現在の日本の林業では大規模な設備投資は難しいのが現状です。
高品質な横架材が国内では入手困難
家を建てる際、様々な種類の木材を使用します。
シロアリ対策が必要な土台には桧やヒバ、柱には縦の力に強い杉などを使います。
そして、梁などの横向きに使う横架材と呼ばれる部分には、粘り強いベイマツや赤松の集成材を使用するケースが一般的です。
桧や杉は日本国内でも入手しやすいのですが、ベイマツは輸入に頼るほかありません。
地域によっては杉を横架材として利用しているケースもありますが、これは珍しいケースであり設備等の問題もあることから、一般的に普及するのは難しいと言えます。
日本の家づくりは、世界的ウッドショックの影響を受けざるを得ないのです。
ウッドショックだけではない建築資材の高騰
これだけウッドショックの影響が大きいと、家づくりをどうするべきか悩む方も多いのでは。
ウッドショックの影響を受けない家づくりはあるのでしょうか?
木材価格高騰は無垢材だけではない
ウッドショックの影響から、憧れの無垢の家を諦めようと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、無垢材を諦めたからと言ってウッドショックからは逃げられません。
ウッドショックで価格が高騰しているのは無垢材に限ったことではないのです。
集成材やベニヤ板、ウッドチップを使った製品まで、木材から生まれる製品は全て高騰しています。
鉄の価格も高騰
木材が高騰しているなら木造の家は諦めて、鉄骨造の家を検討する?
残念ながら、鉄骨の価格も高騰しています。
そして、家の構造躯体が鉄骨だとしても、それと合わせて木材も使用しなければ家は建てられません。
世界情勢や円安の影響から、木材や鉄材にとどまらず住宅設備機器や壁紙までほとんどの資材が値上がりしている状況です。
ベースポイントの対応について
これまで解説してきました通り、ウッドショックは甚大な影響を及ぼしています。
更にウッドショックに加えて、半導体不足や為替など様々な要因からほとんどの資材価格が上昇しています。
これは、ベースポイントも例外ではありません。
ベースポイントでもウッドショックや資材価格高騰のため、ベースとなる基本価格を値上げしています。
しかし、お施主様への影響を最小限にとどめるための対応もしています。
契約後に価格やプランの変更はしません
注文住宅はスーパーでの買い物とは異なり、契約からお引渡しまで6カ月以上かかります。
目まぐるしく変動する世界情勢からすると、この半年は非常に長い期間だと言えます。
3カ月後どころか1カ月後の価格すら予想がつかない状況ですので、契約からお引渡しまでの間に資材価格が大幅に高騰しているケースも少なくないでしょう。
こうした状況下では仕方ないのかもしれませんが、契約後や工事途中の段階でも資材高騰を理由にハウスメーカー・工務店から追加の請求が届くという事例も多くあります。
他にも、契約価格以内に抑えるために、契約後にもかかわらず間取り縮小の提案をされるケースもあるそうです。
しかし、これではお施主様の負担が大きすぎると思います。
ハウスメーカーにとっては数ある内の1棟かもしれませんが、お施主様にとっては人生最大の買い物であり、家族の人生を支える大切な場所です。
家族のために悩みに悩んで決心した住宅ローンや間取りを無駄にしたくありません。
ベースポイントでは、契約後に資材価格高騰を理由に価格やプランの変更を申し入れることは致しません。
実績として、今までも価格やプランの変更申し入れは一切しておりません。
もちろん、オプション追加や減工事などによる価格やプランの変更などは柔軟に対応いたしますのでご安心ください。
単純な価格転嫁はせず、高品質を追求する
資材価格は高騰していますが、そのまま単純に住宅価格へ転嫁するようなことは致しません。
そして、品質を落として価格を抑えるということもありません。
変動する価格の中で、よりコストパフォーマンスに優れた高品質な資材を丁寧に選んでいます。
例えば、従来は土台にはシロアリに強いベイヒバ、床材には柔らかく粘り強いレッドパインを標準で採用していました。
どちらも輸入がメインの木材ということもあり、ウッドショックの影響から価格が大幅に上昇しました。
そこで、現在は標準仕様を土台、床材ともに国産桧材へと切り替えています。
ウッドショック以前は国産桧材は高価格帯のため標準仕様ではなかったのですが、国産材の値上がり幅以上に輸入材が高騰したため、価格帯が同程度になったことから国産桧材を採用しました。
ウッドショックにより住宅価格が上昇してることには変わりありませんが、単純なコストアップで終わらせずに家の品質も高められるよう努力と工夫を重ねています。
小さい家で広く暮らす提案
ベースポイントでは、価格を抑えるために住宅性能を下げるような提案は一切致しません。
家族の一生を支える大切な場所ですから、心地よい空間であることが大切です。
住宅性能を下げずに予算を抑えるための対策は2つあります。
1つは土地の価格を抑えること。
もう1つは、住宅のサイズをコンパクトにすることです。
図面で見ると家は小さく感じてしまうものです。
そして、「せっかくのマイホームだから」という想いも手伝ってついつい家が大きくなる傾向もあります。
でも実際のところ、「家のサイズ」と「広く暮らす」ことは別のことなのです。
面積が大きいにもかかわらず、広がりがなく窮屈な家というのもよく見られるケースです。
ベースポイントがご提案するのは、予算に収まるコンパクトな家でゆったりと広く暮らすこと。
家と周囲の環境を心地よくつなぐお庭のある家を建てて、ゆとりのある暮らしをオススメします。
ウッドショックを逆手にとって、自分たち家族にとって本当に大切なことを見つめ直し、新しい暮らしを始めてみませんか?
まとめ
世界的な木材不足による木材価格高騰であるウッドショック。その要因は複合的であり、いまだに先が見通せない状況です。
輸入木材も国産木材も依然として供給が不安定で、木材全般の価格が高騰しています。
それだけでなく、木材以外の建築資材も軒並み価格が高騰しており、それに応じて住宅自体の価格も上昇しています。
予算を削減する方法は様々ですが、住宅性能や暮らしの品質を下げてまで予算を合わせることはお勧めいたしません。
ベースポイントでは、住宅性能と暮らしの品質を下げることなく、予算内で家づくりができるような提案を心がけています。
ウッドショックの影響が大きい今だからこそ、家族にとって本当に優先すべきことを見つめ直す機会にしてみてはいかがでしょうか?
<筆者プロフィール>
設計、現場管理のほか、Web製作など
ベースポイントの全てを担当しています。