家づくりを考え始めると、まずは住宅会社のホームページを見てみたり、家づくり系YouTubeなどを見る方が多いと思います。
こうして調べ始めるときっと「高気密高断熱」というフレーズと出会うはずです。
高気密高断熱についてはよく分からなくても、「きっと高性能な住宅なんだろう」というイメージは持たれるのではないでしょうか?
きっとそれを狙っている会社も多いと思います。
しかし、高気密高断熱というフレーズだけが独り歩きしてしまっている感があります。

大切な家づくりですので、「高気密高断熱」を正しく理解しておくことが重要です。
高断熱はまだ意味が分かりやすいかもしれませんが、高気密はなかなかイメージしにくいと思います。
ただの便利フレーズとして「高気密」が間違った使われ方をしていることがあるので、余計に誤解しやすい言葉です。
今回は高気密の意味について解説していきたいと思います。

一般的な高気密のイメージ

高気密の家と言われたらどんな家をイメージしますか?
気密という位だからきっと空気の漏れない隙間のない家なんだろうと考えるのではないでしょうか。
その通りで、家の隙間の小ささのことを気密性能と言います。
隙間が小さい家のことを高気密住宅と呼んでいます。

では、家の隙間というとどんなイメージをお持ちですか?
家の隙間というと隙間風が代表的ですよね。
確かに昔の家は隙間だらけなので隙間風が入ってきたり、隙間が大きいと外の光が見えてしまうことさえありました。
室内を冷暖房でいくら快適にしても隙間風が入ってしまっては台無しですから、隙間風が入らないように気密性能が高い方が良いでしょう。

昔の家は外側からも内側からも柱などの構造躯体が見える真壁という造りが主流でした。
真壁の場合、柱と壁の間に隙間が空きやすかったのです。
最近の家は外側は外壁材で包み、内側はビニールクロスで覆うことで、柱など構造躯体が見えないようになっています。
この造りだと目に見えるような隙間はありませんし、隙間風が入ることもほとんどないと思います。

「それなら最近の新築はすべて高気密なのでは?」と思われるかもしれませんね。
確かに昔の家のように隙間風が入ってくる家は今ではあまりないと思います。
しかしながら、実はほとんどの家は高気密住宅ではありません。
隙間風が入る入らないと高気密は別次元の話なのです。

高気密の意味

では、高気密住宅で必要とされる気密とはどう意味なのかというと、壁・床・天井の内部に空気や湿気が入らないようにするというのが気密です。

最近の家のように外壁材で包んでしまえば、隙間風は防ぐことができるでしょう。
しかし、壁の内部に空気が入り込んでしまうようでは気密性能があるとは言えません。

<補足>
ここでいう「壁の内部」というのは一般的に断熱材が入っている部分のことで、壁体内通気のための通気層のことではありません。
難しいので簡単にご説明すると、湿気を排出するために計画的に設けた通気層(空気が流れる層)は空気が流れていいのですが、本来は空気が入らない断熱材を入れている部分のことを「壁の内部」と表現しています。

室内に隙間風が入らないとしても、壁内部に空気が流れてしまえば家の快適性能は大きく損なわれます。
住んでいる人は隙間風を感じないのに、なぜ快適ではなくなってしまうのか。
それは、壁の内部を空気が流れてしまうと断熱材の持つ断熱効果を発揮できなくなってしまうからです。

高断熱には高気密が必要不可欠

壁の内部に空気が流れるとなぜ断熱効果が発揮できないのかを解説していきます。
少し気密と離れて断熱の基本についてお話しします。

断熱材は様々な種類がありますが、基本的な原理は同じです。
断熱材の素材自体に特別な断熱能力がある訳ではなく、断熱材に含まれる「乾燥した静止空気」を利用しています。
大切なポイントなので細かく解説します。

静止空気

静止空気とは、そのままですが動いていない状態の空気のことです。
動いていない空気は温度を伝えにくいという性質があります。
逆に動いている空気は温度を伝えやすくなります。
同じ気温の環境でも風の有無で体感温度が大きく異なると思います。
これが空気が静止しているか動いているかの差なのです。
窓サッシのガラスを2枚や3枚にすると断熱性能が高まるというのも、ガラスの間の静止空気の性質を利用したものです。

湿気

湿気を含むかどうかでも空気の性質は変わります。
水は空気の20倍も熱を伝えやすいのです。
当然、水分を多く含んだ湿気の多い空気は熱を伝えやすくなります。
カラッとした夏とジメッとした夏では過ごしやすさが違います。

代表例:鍋つかみとサウナ

断熱材の要である乾燥した静止空気について、もう少しイメージしやすい事例をご紹介します。

<鍋つかみ>

お料理をしているとき、熱々の鍋を持つときはどのように持ちますか?
素手では火傷しますので、鍋つかみ(ミトン)を使用したり、布巾を利用して鍋を持ちますよね。

つくばみらい市の高気密高断熱住宅に欠かせない「乾燥した静止空気の例である鍋つかみ画像

これも乾燥した静止空気を利用しているのです。
フカフカの鍋つかみの内部には空気が含まれていますし、一重では熱い布巾も折りたたんだり重ねて空気層をつくる事で熱さを緩和できます。
熱い鍋を持つときにキッチンにある濡れた布巾を使用したことはありませんか?
冷たい水で濡れていて熱さに強そうに思えますが、熱を伝えやすい水を含んでしまうことで断熱効果が低下してしまいます。
濡れた布巾がすぐに熱くなってしまった経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

<サウナ>

最近はサウナ人気が盛り上がっているようですが、皆さんはサウナはお好きですか?
サウナの場合、熱さを楽しむ場所なので空気と湿気の性質を断熱材とは正反対の方法で利用しています。

ロウリュ
アウフグース(熱波)

サウナの室温設定は一定のまま運用するのが通常だと思いますが、より熱く感じさせるときには水蒸気をプラスします。
高温に熱したサウナストーン水をかけることで水蒸気を発生させるのですが、サウナ界ではロウリュと呼ぶそうです。
空気中の水分が多くなることによって体感温度が上がっていきます。

そして、空気の流れも利用します。
アウフグースや熱波と呼ばれているそうですが、タオル等であおぐことで風を起こすサービスもあります。
静止空気では熱が伝わりづらいので、空気を動かすことで更に体感温度を上げていきます。
サウナは熱を楽しむ場所なので、住宅の断熱でやってはいけないことが盛りだくさんです。

このように、空気や湿気の性質はいろんなところで活用されています。
この性質は変えることができませんので、正しく理解して上手に付き合うことが大切です。
高断熱を実現するためには、乾燥した静止空気を確保することがいかに重要なのかご理解いただけたと思います。
高断熱には空気の流れと湿気を遮断する高気密が欠かせないのです。

気密性能はC値で表す

気密性能の大切さがわかってきたかと思いますが、家の気密性能はどうやって確認すればよいのでしょうか?
もちろん見た目ではわかりませんので、測定値を数値で確認できます。
気密性能はC値(㎠/㎡)で表示されます。

断熱性能を表すUA値(W/㎡K)は家の表面積・気積・断熱材の種類や厚みなどを元に計算して算出します。
一方、気密を表すC値は計算では算出することはできません。
実際に家を建てている施工現場で気密測定の機械を用いて数値を測定します。
㎡当たりの隙間の大きさがC値として表示されるので、数字が小さい方が高気密となります。
高気密を実現するためには適切な施工方法と施工精度が大切です。

高気密の曖昧さ

ではC値がどれくらいだと高気密だと言えるのでしょうか。
以前はC値5.0㎠/㎡以下だと高気密だとされていましたが、現状はあまり明確な規定がある訳ではなく一般にC値1.0㎠/㎡以下を高気密と呼んでいるようです。
室内の計画換気が十分に機能するためにはC値0.5㎠/㎡程度が目安になります。

<補足>
気密性能は「断熱」だけでなく「換気」とも密接な関係がありますが、こちらの詳細は次回のコラム『高気密の必要性 換気編』にて解説させていただきます。

では、ホームページで高気密高断熱を掲げている住宅会社の場合、C値はいくつなのでしょうか?
実際はここのところが曖昧なのです。
C値1.0㎠/㎡かもしれませんし、0.3㎠/㎡かもしれませんし、はたまた1.0以上なのか…。
具体的なC値が提示されていれば目安になりますが、数値がない場合は判断がつきません。
それ以前にC値の測定は義務ではありませんので、気密測定自体をしていない家もたくさんあります。

今回解説させていただいたように、快適に暮らすためには高い気密性能が必須です。
高気密という表記だけで安心せずに、実際の目標C値まで確認していただくと間違いありません。
ベースポイントはC値0.3㎠/㎡以下を標準仕様としていますが、少なくとも0.5㎠/㎡を目安に比較検討することをお勧めします。

高気密反対派の意見もある

インターネットで高気密について調べていると、高気密反対派の意見も出てきます。
家づくりの正解は1つではありませんし、それぞれの考え方や意見があるのは良いことだと思います。
しかし、それが本当に理に適っているのかはきちっと判断しながら情報の取捨選択をしてください。
今回は空気や湿気の性質について解説させていただきましたが、これらの性質は私たちに変えることはできない自然の原理ですので一定の判断基準として機能すると思います。
空気や湿気の性質を理解した上で比較検討してみてください。

まとめ

長く快適に暮らすためには、空気や湿気の性質を正しく理解して、理にかなった家づくりをすることが大切です。
断熱効果を発揮させるために不可欠な「乾燥した静止空気」を確保するには高気密の施工が求められます。
快適な家を建てたいのなら気密の考え方やC値を目安にしながら比較検討することをお勧めします。
高気密の考え方を参考にして、ぜひ長く快適に暮らせる家を建ててください。

<プロフィール>

つくばで注文住宅を手掛けるベースポイントの代表者
坪野 隼太

ベースポイント株式会社 代表取締役

営業、設計、現場管理など家づくり全般とWEB、SNS等を担当しています。

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