今年は元日から能登半島地震があり、あらためて地震の恐ろしさを実感させられました。
今回の震災では倒壊した建物も多く、家の倒壊により圧死してしまったケースが多く見られました。
全壊・半壊の建物もまだ解体作業が進んでいないようですし、余震で新たに倒壊してしまう建物もあるようです。
震災で損傷している建物は、その後に繰り返される余震に耐えるだけの力が残っていないことも多いのです。
被災地の皆様が一日も早く日常を取り戻すことを願うばかりです。
そして、工務店としてできる地震対策をしっかりと責任を持って進めていきたいと思います。
今回、木造住宅倒壊解析ソフトウェア「wallstat」の操作講習に参加してきました。
wallstatは、木造住宅が地震の際にどのように耐えるのか(倒壊するのか)を計算し、3D動画で可視化してくれるソフトです。
実際に建てたモデルで耐震について実験したところ、wallstatのシミュレーションと同じように動いたそうです。
それだけ優れもののソフトなのですが、今のところなんと基本無料で使用することができます。
しかし、いくら優秀なソフトがあっても使えなければ意味がありません。
そこで、操作講習に参加してきたのです。
今回の講習で講師を務められたのは大竹工務店の大竹さん。
そう、ソフトの専門家ではなく実際に業務で使用している大工さん。
高性能な家づくりにこだわる同志であり、施工まで自分で行うスーパー大工さんです。
大竹さん自身も独学でソフトを使用していて、その経験で得たものを共有していただきました。
「震災が来てから後悔したくない」という大工さんとしての強い想いから、wallstatの活用に取り組んでいらっしゃいます。
ソフトの操作知識だけでなく、こういった家づくりへの姿勢も見習わなければなりません。
今回の講習に参加してみて、簡単ではないですが活用したいと思いました。
耐震性能の計算方法はいくつかあるのですが、どれか一つだけが正しいという訳ではありません。
耐震性能については複合的に検証することが大切ですし、特にwallstatは数値だけでなく3Dで可視化されるというのが面白い部分です。
サンプルデータでシミュレーションを作成しましたのでご紹介させていただきます。
耐震性能を左右する筋交いの量を変えた2パターンの動画です。
筋交いの不足している建物 ≫
筋交いを追加した建物 ≫
いかがでしょうか。
どちらの建物にも同じ地震エネルギーを加えていますが、筋交いの量でこれだけ家の損傷が変わります。
筋交いの少ない家は地震で大きく損傷しています。
一方、筋交いを追加した家は地震の際に変形こそしていますが大きな損傷はありませんでした。
こうして耐震シミュレーションを重ねていくことでより効果的な耐震対策を実施することが可能になります。
耐震性能が足りていない場合、シミュレーション上で倒壊するというショッキングな結果にもなります。
家づくりは常に予算という課題と隣り合わせです。
しかし、予算を削減するために建物の性能を落としてはいけません。
基本的な性能を有していない建物を未来に残す意味が無いからです。
特に耐震性能をないがしろにしてしまえば、命にかかわります。
新築にせよ、リフォームにせよ、耐震性能をシミュレーションすることが大切です。
こういった講習は受けて満足しがちですが、活用しなければ意味がありません。
wallstatを使いこなすにはまだまだ訓練が必要ですが、経験を積んでいきたいと思います。
人の命と暮らしを預かる家をつくる工務店として、あらためて責任を自覚して精進したいと思います。
講師の大竹さん、ありがとうございました。
設計から現場監督まで家づくり全般を担当してます。
趣味はファミリーキャンプとパン作り。
最近はプロバスケ「茨城ロボッツ」のにわかファン。