最近では高気密高断熱というフレーズも一般的になりつつあります。
ただ、実際のところ一般的な住宅が「高気密高断熱」化しているかというと、そういう訳ではありません。
高気密高断熱の家はまだまだごく一部に限られています。
その理由の1つは、高断熱への理解が深まっていないことにあるのではないでしょうか。

SNSで高断熱のことを調べてみれば、
「断熱はほどほどでいい」
「高断熱はコスパが悪い」
「高断熱にしても体感できない」
といった投稿も散見されます。
住まい手さんの発信もあれば、工務店が発信しているものもあります。

もちろん家づくりに絶対的な正解はありませんので、この考えを否定するわけではありません。
けれど、断熱の物理的な原理原則は1つだけです。
断熱の原理原則をきちんと理解した上で、それぞれの家づくりを選択することが大切だと思います。
高気密高断熱住宅を選ぶにしても、一般的な住宅を選ぶにしても、前提を正しく理解することが必要です。

今回は断熱と体感温度というテーマで、断熱の基本や自然の原理原則について解説していきたいと思います。
ぜひ基本を理解した上で自分らしい家づくりを選択してください。

高気密高断熱は体感できない?

まずは上でも書いた「断熱はほどほどでいい」問題を考えます。

SNSでは“断熱ほどほど派”の人をよく見かけますが、高断熱高気密住宅の快適性能そのものを否定している人はあまり多くない印象です。
(一部では高気密を否定している方もいらっしゃいますが…)
やはり否定しているポイントは高気密高断熱の「コストパフォーマンス」に焦点を当てた意見が中心のようです。

日本の平均的な住宅と比べれば高気密高断熱住宅のイニシャルコスト(建築費用)は高くなります。
使用する断熱材も増えますし、施工の手間も増えますので、建築費用が増えるのは間違いありません。
高気密高断熱化によってイニシャルコストは高くなるとして、パフォーマンスについてはどうでしょうか?

“断熱ほどほど派”の主張としては、高気密高断熱化しても快適性能はそれほど変わらないという考えが軸です。

「どうせエアコンをつければ設定温度になるのだから快適な空間はつくれる。」
「イニシャルコストを抑えて必要な時に自由にエアコンを使った方が良い。」
「太陽光発電を装備すればエアコンは使い放題だから高断熱化はムダ。」

確かに納得してしまいそうな主張です。

しかし、これらの主張には明らかに間違っている部分があります。
それはこの主張の「前提条件」にあります。

その「前提条件」というのは、『同じ室温なら同じ快適さである』という考え方です。

普通に考えたら、同じ室温の部屋が2つあったとしたら、どちらの部屋も同じ快適さだろうと思いますよね。
温度について深く考えなければ、こう考えるのが一般的だと思います。
私も昔はそんなイメージを持っていました。
けれど、実際のところはそうじゃないんです。

同じエアコンを使い、同じ室温に管理された部屋だとしても、断熱のレベルによって快適性能には差が生まれます。
にわかには信じられない話ですよね。
でも本当の話です。

この謎を解き明かしてくれるのが『体感温度』。

体感温度はそれぞれの感じ方?

「体感温度ってなに?」と質問されたら回答できますか?
多くの方が「体感温度=個人それぞれの感じ方」というイメージをお持ちではないかと思います。
「自分の体感温度とあの人の体感温度は違う」など、それぞれの感覚として捉えがちです。
“体感”というフレーズから“感覚”っぽい雰囲気を感じますし。
しかし、実際は個人の感覚とは全く異なり「体感温度」はしっかりと数値で求められるものなのです。

体感温度をただの“感覚”ではなく“数値”として正しく理解しているかどうかが重要なポイントになります。

話を“断熱ほどほど派”に戻します。
高断熱は不要でほどほどの断熱性能こそバランスが良いという主張は「室温が同じなら同じ体感である」という前提に立っています。
しかし、その前提は根拠のないイメージにすぎないのです。
“体感”というぼんやりしたフレーズから想像しているのだと思われますが、実際の『体感温度』はイメージの話ではありません。
『体感温度』は数値で語られるべきものなのです。

小美玉市で高気密高断熱住宅を手掛けるベースポイントの断熱施工現場写真

イメージだけで考えていてはコストパフォーマンスの「パフォーマンス」の部分を正しく評価するのは不可能です。
もちろん私も家づくりにおいてコストパフォーマンスは非常に大切だと考えています。
だからこそコストだけでなく「パフォーマンス」も正しく把握する必要があるはずです。

一生に一度の家づくり。
なんとなくのイメージだけで建てて後悔する前に、家づくりについての基礎知識を身につけましょう。
まずはパフォーマンスのキーとなる『体感温度』について解説していきます。

 

空気の温度だけでは快適さは測れない

まず、『体感温度』というのは、人間の肌が感じる温度の感覚を数値(定量)で表したものです。
人間の感じる温度ではあるのですが、

家の温度と聞いて多くの人がイメージするのが気温(室温)だと思います。
しかし、住環境を左右しているのは空気の温度だけではありません。
空気の温度と同様に大切なのが『表面温度』です。

ここでいう表面温度とは、床・壁・天井の室内側の表面の温度のことです。

小美玉市で高気密高断熱住宅を手掛けるベースポイントの桧の床材

コロナ禍の頃、施設の受付などでレーザー式温度計(放射温度計)でおでこの温度を測られた経験はみなさんあると思います。
あれと同じような感じで、レーザー式温度計を使えば床・壁・天井の表面温度の確認をすることができます。

実際に計測してみればわかることですが、部屋の「空気の温度」と「表面温度」は一緒ではないのです。
通常は温度計しか見ないと思いますので「空気の温度」だけを考えがちですが、それ以外の要素も部屋の快適さに影響しています。

「床はともかく、壁や天井には触れることが無いのに快適性にそんなに影響あるの?」

と思われるかもしれません。
実はおおいに関係があるのです。

それを説明するために、熱の伝わり方について簡単に解説します。

 

熱の伝わり方

細かい話をすると、熱の伝わり方は3つの種類があります。
その3つとは、「伝導・対流・放射(輻射)」です。

伝導:物質の接触によって、温度の高いところから低いところへ熱が伝わる現象。

対流:温められた液体や気体などの流体自身が移動することで、全体に熱を運ぶ現象。

放射:熱源から電磁波(赤外線など)が放出され、間に何もない空間を飛び越えて直接熱を伝える現象。

簡単に3つの定義を書かせていただきましたが、これをすべて理解する必要はありません。
熱の伝わり方についてのポイントは2つです。

① 接触しなくても熱は伝わる。

② 熱は温度の高い方から低い方へ移動する。

このポイントだけ押さえておけば大丈夫です。

①の接触しなくても熱は伝わるというのは、イメージしやすいと思います。
ストーブや焚火は直接触れなくても近くにいるだけで体がポカポカするのと同じです。

②の熱は高い方から低い方へ移動するというのも難しくはないのですが、見逃しがちな部分でもあります。
熱の動きは水の動きと一緒で、高い方から低い方へ。
人間の都合のいいように止まってはくれないのです。

住宅の快適性においても熱の動きを理解することが大切です。

・40℃近くなる真夏はエアコンの設定温度を低くしないと効かない。
・寒い冬の日はいくら暖房をつけても足元が寒くてブランケットや厚手の靴下が手放せない。

こんな経験はありませんか?
きっとどなたでも経験している“あるある”だと思います。
どちらにも共通しているのは冷暖房で“温度管理はしているのに”快適ではないという点です。
こういった例からも室温(気温)が全てではないということがわかると思います。

小美玉市で高気密高断熱住宅を手掛けるベースポイントの心地いいLDK写真

 

体感温度の考え方

快適性は室温だけでは決まらないということをご理解いただけたかと思います。
それでは『体感温度』の中身を見ていきましょう。

いろいろな説明をしてきましたが、体感温度を数値化するのはとても簡単です。
室温と床・壁・天井の表面温度との平均の値が体感温度となります。

体感温度≒室温+床・壁・天井の表面温度2体感温度≒\frac{室温{+床・壁・天井の表面温度}}{2}

精密に計算するにはもう少し複雑な計算式がありますが、上記の式で問題ありません。
この数式から、室温と同じだけ表面温度も大切だということがわかります。

体感温度についての具体例を見ていきましょう。
こちらは冬の時期の事例です。
一般的な断熱レベルの住宅と高気密高断熱住宅でどれほど体感温度の差があるのでしょうか?

前提として、一般的な住宅も高気密高断熱住宅も室温は25℃に維持されているものとします。
25℃あれば真冬でもポカポカです。

真冬の茨城県では、およそ0℃前後まで外気温が下がる地域が多いです。
住宅の断熱のレベルにより度合いは異なりますが、外気の冷たさがジワジワと家のい中へと伝わっていきます。
やがて、室内の床・壁・天井の表面まで冷たさが到達し、表面温度が室温よりも低温になります。

一般的な断熱レベルの住宅では表面温度は10℃程度、高気密高断熱住宅では断熱効果で表面温度が20℃程度となります。
この時、体感温度にはどれほどの差があるでしょうか。

[一般的な住宅の体感温度]

室温25℃+表面温度10℃2=体感温度17.5℃\frac{室温25℃{+表面温度10℃}}{2}=体感温度17.5℃

[高気密高断熱住宅の体感温度]

室温25℃+表面温度20℃2=体感温度22.5℃\frac{室温25℃{+表面温度20℃}}{2}=体感温度22.5℃
小美玉市で高気密高断熱住宅を手掛けるベースポイントの家とは異なる一般住宅の図解
小美玉市で高気密高断熱住宅を手掛けるベースポイントの家の図解

一般的な住宅の体感温度17.5℃に対して高気密高断熱住宅は体感気温が22.5℃となっており、5℃の差があります。
暖房で同じ室温にしているにもかかわらず、断熱レベル次第で体感温度に5℃の差が生じるのです。
5℃の差というと小さく見えるかもしれませんが、とても大きな差を意味しています。

「5℃程度の差ならエアコンの設定温度を上げればいいだけなのでは?」という意見もあると思います。
もし高気密高断熱住宅と同じ体感温度22.5℃にする場合、室温を何℃にしたらよいのか計算していましょう。

室温35℃+表面温度10℃2=体感温度22.5℃\frac{室温35℃{+表面温度10℃}}{2}=体感温度22.5℃

断熱不足による表面温度の低下を補うためには室温を35℃まで上げなければいけない計算です。
複数の暖房機器を使用すれば実現可能かもしれませんが、現実的ではありません。
断熱はほどほどにして冷暖房機器で補うという発想には限界があります。

『体感温度』は個人の感覚だけの問題ではなく、快適性能を数値(定量)で確認するための指標です。
イメージや感覚だけに頼らず、体感温度という考え方も活用してみてください。

 

高気密高断熱住宅のコスト

高気密高断熱住宅の快適性能について『体感温度』という観点から解説いたしました。
コストとパフォーマンスの“パフォーマンス”の部分についてはある程度おわかりいただけたかと思います。

ただ、コストについてはまだ疑念をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
「いくらパフォーマンスが良くてもコストが高いから損する」という意見もあるでしょう。

冒頭でも書きましたが、一般的な住宅と比較すれば高気密高断熱住宅のイニシャルコスト(建築費用)は確かに高くなります。
あくまでも一般論ではありますが、高気密高断熱住宅にすると300万円程度イニシャルコストがアップするそうです。
しかし、イニシャルコストが300万円高くなるとして、それは300万円の負担が増えたというわけではありません。
高気密高断熱住宅ではランニングコストを抑えることができます。

小美玉市で高気密高断熱住宅を手掛けるベースポイントのLDK事例写真

ベースポイントの家に暮らしている住まい手さんの例です。
以前暮らしていたアパートの光熱費と現在の光熱費を比較すると、年間10万円以上は安くなっているそうです。
家の広さもアパートよりもかなり広くなっていて、通常通りに暮らしていてこれだけの差がありました。
しかも、こちらの家は太陽光発電を装備していない状態です。

太陽光発電を装備したら更なる光熱費削減が見込めます。
そうでなくてもエネルギー資源を輸入に頼る日本においては、今後も電気料金の値上げは続いていくと予想されます。
電気料金の値上げが進行すれば、毎月の削減額も大きくなっていきます。

仮に現状のまま年間10万円程度の削減効果だとして、30年間でイニシャルコストの300万円はペイできる計算です。
これは最低ラインですので、太陽光発電や電気料金の値上げのことを考えればもっと短期間で元が取れるでしょう。

しかも、高気密高断熱住化したイニシャルコストの元が取れるだけでなく、その間の暮らしがずっと心地いいのです。
イニシャルコストを抑えてしまうと快適性能の低い暮らしで我慢しながら、最終的な支払金額も多くなる。
高気密高断熱住宅なら、イニシャルコストの上昇分を低いランニングコストで快適に暮らしながらペイできる。
みなさんならどんな暮らしを目指しますか?

目先のコストだけに惑わされてはいけません。
コストもパフォーマンスも両方手にすることもできるんです。

 

まとめ

今回は断熱性能と体感温度について解説させていただきました。

SNSを中心に断熱性能について様々な意見が飛び交っていますが、断熱は目に見えない部分だけにイメージで語られがちです。
今回の体感温度についてのコラムで、断熱性能が重要である理由がご理解いただけたでしょうか?
少しでも断熱への理解に役立てたなら幸いです。

体感温度はあくまでも指標に過ぎないので、絶対に快適な温度が存在するわけではありません。
同じ部屋で過ごす夫婦がエアコンの温度設定で意見が一致しないことがあるように、快適な温度は人それぞれです。
ただ、室温と表面温度の差が少ない方が、過ごしやすい体感温度に調整しやすいのは間違いありません。
快適な家づくりのために『体感温度』という指標を正しく使ってみてください。

コストとパフォーマンスをどのように考えて選択するかは自由です。
自分らしく暮らせる家を考えて、自分らしい選択をしてください。

茨城県で必要な高気密高断熱の基準についてのページもあわせてご覧ください。

家づくりで気になることがありましたら気軽にお問い合わせください!

<プロフィール>

小美玉市で高気密高断熱住宅を手掛けるベースポイントの代表者
坪野 隼太

ベースポイント株式会社 代表取締役

営業、設計、現場管理など家づくり全般とWEB、SNS等を担当しています。

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