年末年始はどのように過ごされましたか?
風邪やインフルエンザも流行っているようなので、家でゆっくりという人も例年以上に多かったかもしれませんね。
わが家はというと、流行り病とは関係なく毎年ゆっくり過ごすことが多いです。
私の実家(埼玉)と妻の実家(茨城)へ帰省するくらいなので、移動もたいしたことありません。
お節とお餅を食べ、お酒を飲んでのんびりして、しっかり体重が増えるのが毎年のルーティンです。
子どもの頃はお節料理は退屈で好きではなかったのですが、不思議と大人になるにつれて大好きになりました。
立派な海老やアワビが入るような派手なものではなく、煮物などを中心とした地味なタイプのお節なのですが、なんだか好きなんですよね。
普段の食卓に並ぶ煮物とそう変わらないはずなのですが、ちょっといい材料でちょっと手間をかけてつくると別物に感じます。
特に、出汁をきちんととったりすると違いを感じます。
日常的には出汁の素を使っていますが、たまにきちんと出汁をとるとやっぱり美味しいんです。
たまに子どもたちが足踏みうどんと出汁から麵つゆを作ってくれることがあるのですが、市販の麺つゆとは全く違います。
手間を惜しまなければ美味しいものが日頃から食べられるのかもしれませんが、なかなかそれも難しいですよね。
丁寧な暮らしに憧れはありますが、まだまだ修行が必要そうです…。

現在建築中の現場にて、セルロースファイバー断熱材の吹込み工事を行いました。
セルロースファイバー断熱材というのは、古紙(主に新聞紙)を原料にしてつくられた繊維系の断熱材です。
板状に成形された断熱材ではありませんので、はめたり張ったりするのではなく「吹き込む」という施工になります。
ベースポイントでは屋根に300㎜、壁に100㎜のセルロースファイバー断熱材を吹き込んでいます。
セルロースファイバー断熱材のような繊維系の断熱材を吹き込む場合、まずは不織布を張る工程があります。
家の外側に張った耐力面材と内側に張った不織布の間に断熱材を吹き込んでいくためです。
下の写真のような感じです。

まだセルロースファイバー断熱材を吹き込む前ですが、この時点で既にかなりの手間がかかっています。
断熱材吹込み用の不織布施工で一般的なのは柱の正面に張っていく方法です。
しかし、私たちの現場では柱の側面に張り付けて固定しています。
もちろん正面から張っていった方が簡単なのですが、わざわざ手間をかけて側面に張っているのです。
これには理由があります。
セルロースファイバー断熱材を吹き込む場合に想定されるデメリットが存在します。
それは、経年と共に断熱材が沈下していき壁の上端部に隙間が発生するという問題です。
吹き込むセルロースファイバー断熱材の密度が低いと隙間が空きやすいため、高い密度で吹き込むことが重要です。
高い密度でセルロースファイバー断熱材をパンパンに吹き込むとどうなるでしょうか?
手前に張った不織布がもっこりと膨らんできます。
柱の正面から不織布を張った場合、柱よりも手前に断熱材が膨らんでくることになります。
そうすると困るのは大工さん。
柱に気密シートを張ったり、石膏ボードを張ったりするのに、断熱材が膨らんでいるとやりようがありません。
私たちは柱の側面に少し引っ込めて不織布を張ることでこの問題を解決しています。
高い密度でパンパンに吹き込んでも柱の手前にはほとんど出てきません。
こうすれば次工程の大工作業もキレイに進められます。
不織布を張る手間は余計にかかりますが、手間を惜しまず丁寧な施工を大切にしています。

では、一般的な柱の正面に張る方法の場合にはどのように解決しているのでしょうか?
1つは不織布を張った後に更に木材の桟で抑える方法です。
もう1つは、とても解決法とは言えない逃げ方をしているケースがあります。
それは、手前に出っ張らない程度で吹込みを終了することです。
もうお分かりだと思いますが、これでは密度が低くなるため経年と共に断熱材が沈下していずれ隙間が空いてしまいます。
そして更に残念なのは、これが珍しいケースではないということです。
これはまた別のケースなのですが、断熱材の吹込みの際に不織布ではなく気密シートを張るという会社さんもあるそうです。
確かに不織布を張って断熱材を吹き込んだ後、さらに気密シートを張るのは2度手間に思えます。
しかし、気密シートを張って繊維系断熱材を吹き込むのは間違いです。
気密シートはその名の通り気密性を高めるための部材なので空気を通しません。
空気の逃げ道がないのに断熱材を隙間なく吹き込むことなど不可能です。
繊維系の断熱材を吹込む際は大量の空気と一緒に吹き込むのですから空気の逃げ道が必要なことはすぐに分かりますし、そのための不織布です。
もし気密シートで支障なく吹込み施工ができているとすれば、空気の逃げ道があるはずなので気密施工が不十分ということになります。
きっと意味を考えずに形だけを見て工程を省略してしまっているのだと思います。
セルロースファイバー断熱材について検索すれば、「沈下リスクがあるから採用しない方がいい」という情報もあると思います。
もちろん沈下リスクがあるのは事実なのですが、過去の失敗例が正しい施工法だったのかは疑問です。
同じ材料を使ったとしても、施工方法が間違っていれば上手く機能しないのは当然です。
どんな材料であっても材料への正しい理解と手間を惜しまない正しい施工が必要不可欠です。
お施主様にも実際の施工の様子を見学していただきました。
セルロースファイバー断熱材を吹き込んでから不織布をカットして内部の様子までご確認いただきました。
もちろん隙間なく入っていますし、下部の断熱材を手で掻き出しても上部の断熱材は落ちずに留まっていました。
それだけ高い密度で吹き込んである証拠です。
完成してしまうと見ることのできない部分なので、実際に目にすることでご安心いただけたのではないかと思います。
施工の効率化は大切なことですが、省いてはいけない手間も存在します。
工程を単なる作業として捉えるのではなく、何のためにどういう意味がある工程なのかを理解することが大切です。
これからも家づくりへの理解を深めながら、必要な手間を惜しまない丁寧な施工をしていきたいと思います。

設計から現場監督まで家づくり全般を担当してます。
趣味はファミリーキャンプとパン作り。
最近はプロバスケ「茨城ロボッツ」のにわかファン。